以前グループホームで介護助手の仕事をさせていただいていた頃、
入居者さん達は皆さん認知症の方々で、
毎日「初めまして＾＾」と挨拶しながら
ご一緒させていただいていました。
そんな認知症の方々とご一緒しながら日々
「どうして忘れることができるようになったのか…」
ということを考え、感じてきました。
その頃の私がたどり着いた答えは
「忘れることでお相手を許すこと、受け入れることができる」
ということでした…。
そんな介護施設の仕事を退き、戻ってきたこの実家には
「昔いじめられた記憶を忘れられない弟」が
今のような季節の変わり目に必ずと言っていいほど
過去の苦々しい記憶を思い出しては大声を上げたり
ものに当たり散らしています…
主にそばにいる母がその状況を目の当たりにしていますが
時折タイミング悪く私がその場に出くわすと…
私の自我は
「弟の身体の痛みや融通の効かない身体に苛立ち、嫌な記憶が呼び覚まされることはとても辛いことだから…」
と、見て見ぬふりを心がけようとするのですが
…残念ながら、私の上（神）の意識が直下的に
「いい加減になさい！」と
弟に諭しはじめます。
諭す（さとす）は覚す（さとす）であり、
気づきのメッセージです。
母の場合、感情を我慢し続けた末に
間欠泉のように感情的に怒りあげますが、
私のお覚は上からピシッと雷を振り下ろすように叱る行為になります。
…自分を正当化するつもりもないのですが、
その違いは弟自身無意識に受け取っていて、
その後の態度が明らかに違います。
弟はその一喝でハッと気づき、私に謝ってきます。
…それが私はとても残念で…
「謝らなくていいから…どうせなら感謝できる時にありがとうって言ってほしいな」
と伝えます。
弟が過去に囚われること自体も切ないし、
その囚われに感情が揺れてしまうきっかけが
彼の身体状態が彼にとって過酷な状況であることがわかる分
余計に切なく感じます…。
昔はスムーズに動いていた指先、手先、足捌きの不自由さ、
膝に痛みを抱え、水が溜まるようになってしまった不具合も…
もうこれ以上、彼が一人で抱えなくてもいいのに…と
ただただ切ないです…。
でも、これが彼が選んでいる人生の道、
今世での学びなのだと思います。
であるならせめて、過去の苦々しい辛い記憶くらい
上手に忘れられたらいいのに…そう願うのです。
認知症を患っていらしたあの方々は
過去の美しい記憶だけを覚えていらして
時折「初めまして」な私に話して聞かせてくださいました。
そのお話しを「まるで初めて聞かせていただいたかのように」
毎回聞かせていただくたびに、
心が温かく、気持ちが柔らかくなって
嬉しくなっていました、私。
弟がもし認知症を患えたなら
彼は幼き頃の楽しかった記憶だけを
思い出せるのでしょうか？
もし苦々しい記憶に囚われるままならやはり辛いけれど
…人の持つ「忘れる」というお力をどうか
意図的に活用できたら…と願ってやみません。
…そして、これは
人との関わりにおいても
活かしていきたい能力、技術だと思っています。
本当は一緒にいたかった仲良きあの人と
一瞬のすれ違い、勘違いが起これば
…距離を置きたくなるものです。
そんな距離を再び縮めるのは、やはり
「忘れるという力」を活かすこと、と。
それは互いの愛の器を拡げることとなる…
なぜなら「忘れる」は「許す」だから。
そしてきっと、以前よりもずっと
距離も縮まり信頼という絆も育める…
そう思います。
あの日のことは忘れてね
幼すぎて知らなかった
恥ずかしくて消えたいけれど
もう大丈夫 旅路は続く
あの日のことは忘れるね
みんなだって彷徨ってた
この宇宙が教室なら
隣同士 学びは続く…
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